# 065
2026
夏
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THOUGHT
「お客様は神様です。」
誰だ、こんな強烈な言葉を残していったのは。
三波春夫か。
おかげで日本では長いこと、
お客様は上。
店員は下。
お金を払う側が偉くて、いただく側は頭を下げる。
そんな妙な上下関係まで「接客」と呼ばれるようになってしまった気がする。
「お客様は神様です。」
誰だ、こんな強烈な言葉を残していったのは。
三波春夫か。
おかげで日本では長いこと、
お客様は上。
店員は下。
お金を払う側が偉くて、いただく側は頭を下げる。
そんな妙な上下関係まで「接客」と呼ばれるようになってしまった気がする。
三波春夫さん。
責任とれっつーの。
……と思って、一応調べてみた。
そしたら違った。
ごめんなさい、三波春夫さん。
本人が言った「お客様は神様です」は、
「金を払ってくれる客は神様なんだから、何をされても従いなさい」
という意味ではなかった。
歌うとき、神前で祈るときのように心を澄ませ、お客様の前に立つ。
歌い手としての、自分自身への戒めのような言葉だったという。
だったら悪いのは三波春夫じゃない。
この言葉を都合よく使ってきた、僕たちの方なのかもしれない。
でも、そろそろ終わりにしていいと思う。
僕は、お客様を神様だとは思っていない。
もちろん、スタッフの方が偉いとも思っていない。
僕がつくりたいのは、
お客様と、そこで働く人が、互いに敬意を持って向き合える店だ。
ただし。
ここでよく聞く、
「客と店員は対等なんだから」
という言葉も、僕は少し違うと思っている。
対等というものは、店側が勝手に宣言するものではない。
「私たちはお客様と対等です」
そんな張り紙をしたところで、対等になれるわけじゃない。
対等に扱ってほしいなら、
お客様から、対等に扱うに値する人だと思ってもらわなければならない。
では、どうすればいいのか。
僕は一つしかないと思っている。
プロになることだ。
料理を運んでいるだけの人と、料理を知っている人は違う。
ワインを注いでいるだけの人と、その一本について自分の言葉で語れる人は違う。
注文を聞くだけの人と、その人が何を食べたいのかを考えて提案できる人は違う。
何を聞かれても、
「少々お待ちください」
と厨房へ確認に行く人と、
その場で、
「でしたら、僕はこちらをおすすめします」
と言える人は違う。
店に立っているだけの人と、
その店を背負って立っている人は違う。
お客様は、それを見ている。
僕たちが思っている以上に、ちゃんと見ている。
この人に聞けば分かる。
この人に任せれば大丈夫。
この人が勧めるなら食べてみよう。
この人の話なら聞いてみよう。
そう思ってもらえた瞬間、
「客」と「店員」だった関係が少し変わる。
人と人になる。
僕が言う「対等」は、馴れ馴れしくすることではない。
敬語をやめることでもない。
頭を下げないことでもない。
ましてや、お客様に偉そうにすることでもない。
むしろ逆だ。
きちんと勉強する。
自分たちの商品を知る。
料理を知る。
酒を知る。
店を知る。
そして、お客様を見る。
その積み重ねの先に、ようやく対等がある。
だから僕は、
「お客様は神様じゃない」
とスタッフに教えて終わりにはしたくない。
そんなことだけ教えたら、ただ態度の悪い店員をつくるだけだ。
僕が伝えたいのは、
お客様から、一人のプロとして扱ってもらえる人になろう。
ということだ。
対等に扱ってほしいなら、対等に扱われるだけの仕事をしよう。
意見を聞いてほしいなら、聞く価値のある意見を持とう。
料理について尋ねられたら、自分の言葉で語ろう。
分からないことがあれば、分からないままにせず勉強しよう。
お客様の好みが分からなければ、聞こう。
その人にとって何が一番いいのかを考えよう。
それがプロだと思う。
僕は、スタッフがお客様の前で必要以上に小さくなる店をつくりたくない。
胸を張っていてほしい。
でも、胸を張るためには理由がいる。
制服を着たからプロになるわけじゃない。
名札をつけたからプロになるわけでもない。
店に立った年月だけでプロになるわけでもない。
自分の仕事について、誰よりも考えている。
その自負があって、初めて胸を張れる。
そして不思議なもので、こちらが本当のプロとして立っていると、お客様の接し方も変わってくる。
「これ持ってきて」
ではなく、
「どれがおすすめですか?」
になる。
「早くして」
ではなく、
「どのくらいかかりますか?」
になる。
命令される相手から、
相談される相手になる。
そこまでいって、初めて僕は「対等」と言えるんじゃないかと思う。
63で「釣り銭は、手渡さない。」と書いた。
64では「片膝をつかない。」と書いた。
どちらも、僕が偉そうな店をつくりたいからではない。
むしろ、お客様をちゃんと見たいからだ。
両手で釣り銭を渡すことが丁寧だと決まっているから、そうする。
片膝をつくことが丁寧だと教えられたから、そうする。
「お客様は神様だから」と、とにかく頭を下げる。
僕は、そういう接客がしたいわけではない。
考えてほしい。
なぜ、いまそれをするのか。
目の前のお客様にとって、それは本当に心地いいのか。
もっと自然なやり方はないのか。
そして、
自分ならどうするのか。
僕がスタッフに求めたいのは、僕の動きを完璧にコピーすることではない。
僕がいなくても、自分の頭で考えられることだ。
そのために知識を身につける。
経験を積む。
失敗する。
また考える。
そして、自分の仕事に自信を持つ。
僕たちは、お客様より上ではない。
下でもない。
僕たちは、お客様の時間を預かるプロだ。
だから、媚びなくていい。
でも、驕ってはいけない。
必要以上にへりくだらなくていい。
でも、敬意は絶対に失ってはいけない。
お客様にも、
「この人は、この仕事のプロなんだ」
と思ってもらえる仕事をする。
僕は、それが一番美しい関係だと思っている。
神様と僕たちでは、そんな関係にはなれない。
人と人だから、できる。
三波春夫さんが本当に言いたかったことも、もしかしたら、そんなに遠いところにはなかったのかもしれない。
「お客様は神様です。」を、そろそろ終わりにしよう。
お客様を神様にする必要はない。
そのかわり、
僕たちは、プロになろう。
対等とは、要求するものではない。
仕事で、そう思ってもらうものだ。
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客じゃない。お客様だ。お客でもない。RELATED ARTICLES
会社名
ワンスインアライフタイム株式会社
代表者
代表取締役 大山 充
所在地
三重県津市栄町3-222
設立
2008年
資本金
10,000,000円
事業内容
飲食店運営/宿泊施設の企画・開発・運営/新規事業開発/経営参謀/暖簾分け事業
©Once in a Lifetime Inc. All Rights Reserved.
会社名 ワンスインアライフタイム株式会社
代表者 代表取締役 大山 充
所在地 三重県津市栄町3-222
設立 2008年
資本金 10,000,000円
事業内容 飲食店運営 / 宿泊施設の企画・開発・運営 /
新規事業開発 / 経営参謀 / 暖簾分け事業
会社名
ワンスインアライフタイム株式会社
代表者
代表取締役 大山 充
所在地
三重県津市栄町3-222
設立
2008年
資本金
10,000,000円
事業内容
飲食店運営/宿泊施設の企画・開発・運営/新規事業開発/経営参謀/暖簾分け事業
©Once in a Lifetime Inc. All Rights Reserved.