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僕が自分の店で食べる理由。

# 029

僕が自分の店で食べる理由。

2026

THOUGHT

僕は、
普段ほとんど店にいない。
それでも、
できるだけ自分の店で食事をする。
酒も飲む。
理由は二つある。
一つは、
自分の店の今を知りたいから。
もう一つは、
もっと単純で、
普通にうまいからだ。

オーナーが店に来ると、

多少は店も構える。

「シンさん来た。」

となる。

まあ、

気持ちは分かる。

(笑)

でも、

いくら構えていても、

付け焼き刃のお化粧は、だいたい全部筒抜けだ。

そこまで加味して見ているので、

店の状態を大きく見誤ることは、

ほとんどないと思っている。

 

僕が来たから、

慌てて掃除でも始めてくれたら、

まだいい。

実際には、

そこまで気が利くスタッフは、

そんなに多くない。

(笑)

現場に毎日いると、

目が慣れてしまう。

少しずつ汚れていても、

少しずつ雑になっていても、

それが日常の景色になって、

自分では気づかなくなる。

特に、

うちは甘い。

だから余計に、

たまに外から入ってくる目は必要だと思っている。

 

そして僕は、

店がどんなに忙しくても、

あえて一般のお客様に混じって食事をする。

現場からしたら、

「お前もなんか手伝えよ。」

と内心思っているかもしれない。

(笑)

新人のアルバイトさんなんかは、

「忙しいのに、この人だけ美味しそうなもの食べてるな。」

くらいに思っているかもしれない。

実際、

うまい。

(笑)

 

でも、

好きなものばかり食べているわけでもない。

メニューを見る。

最近食べていないもの。

新しく始めたもの。

少し気になっているもの。

売れ方が変わったもの。

その時、

自分が食べた方が良さそうなものを選んで食べている。

酒も同じだ。

たぶんアルバイトのみんなから見れば、

好きなものを好きに飲んで、

好きなものを食べているようにしか見えない。

絶対そう思っている。

(笑)

 

料理を待つ。

食べる。

酒を頼む。

周りを見る。

料理はいつも通りか。

温度はどうか。

量はどうか。

提供時間はどうか。

グラスが空いた。

誰か気づくかな。

周りのお客様は楽しそうか。

待たされている人はいないか。

スタッフは周りが見えているか。

 

特に忙しい時は、

いろいろなものがよく見える。

暇な時ならできていたことが、

忙しくなった瞬間にできなくなる。

料理が遅れる。

サービスが雑になる。

視野が狭くなる。

だから、

忙しい時ほど、普通のお客様として客席にいる意味がある。

 

そして、

僕はそこで感じたことを、

全部現場に伝えているわけではない。

むしろ、

ほとんど言わない。

 

料理については別だ。

料理長には、

感じたことの88%くらいは伝える。

味。

温度。

量。

盛り付け。

食材。

料理には料理長という、

明確に責任を持つ人がいる。

だから、

僕が感じたことも、

かなり率直に伝える。

 

でも、

料理以外は全く違う。

サービス。

掃除。

店の空気。

スタッフの動き。

気づいたことが100あったとしたら、

口にするのは、

たぶん12くらい。

残りの88%は、

言わない。

 

全部言っていたら、

僕が店へ行くたびに、

現場は、

「今日は何を言われるんだろう。」

となる。

それでは、

僕が見たい普段の店ではなくなる。

 

それに、

僕が気づいたことを、

全部僕が言って、

全部僕の指示で直していたら、

結局、

僕の目で店を運営することになる。

それも違う。

 

もちろん、

衛生や安全、

お客様に迷惑がかかること、

店として放っておけないことなら言う。

でも、

気づいたこと全部を、

逐一、

「ここを直して」

と言う必要はないと思っている。

 

だから、

食べる。

見る。

気づく。

そして、

だいたい黙っている。

(笑)

料理長には88%言う。

料理以外は12%くらい。

別に計算したわけではないけれど、

感覚的には、そのぐらいだ。

 

そして、

ここまで書くと、

全部が仕事みたいだけれど、

もちろん、

それだけではない。

僕は、

普通に自分の店が好きだ。

うなぎが食べたい。

肉が食べたい。

和食が食べたい。

近隣で考えれば、

普通に自分の店を選ぶ。

 

それくらいの商品を出しているつもりだし、

そうでなければ困る。

 

オーナーになると、

店を「事業」として見る時間が増える。

売上。

原価。

人件費。

客単価。

利益。

全部大事だ。

でも、

飲食店は最後には、

一人のお客様が食べて、どう感じたか。

そこへ戻る。

 

だから僕も、客席に座る。普通のお客様に混じる。

食べる。

飲む。

待つ。

見る。

そして、

自分に訊く。

今日、この店に来て良かったか。

YESなら、普通に嬉しい。

NOなら、どこかがおかしい。

 

現状把握が半分。

純粋に食べたい気持ちも半分。

周りから見れば、忙しい店でオーナーが酒を飲んで、

うまそうなものを食べている。

まあ、そう見えるのも仕方ない。(笑)

でも、

好き勝手に飲み食いしているようで、案外ちゃんと仕事をしている。

僕が自分の店で食べる理由は、

そんなところだ。

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